The View from Nowhere「自分が見たとおりに諸物が存在しているとどうしていえるのか」
私の制作に於ける問題は「自分が見たとおりに諸物が存在しているとどうしていえるのか」です。写真であれば、絵筆とキャンバスのように主観によって画面を描くのとは違い、諸物を見ている自分自身と、諸物そのもの、その両方を1枚の印画紙に重ね合わせることができます。撮影者の頭の中で起きていることと、現前の物理的な世界の2つの世界を結んだ結果が画面となって表れます。見るという行為の奥にきっとまだいまの自分にも見えていない、見えているが気づいていないものが必ずあって、それを写真が写しだしてくれると信じています。写真は自己の客観を可能としてくれる。見ている自分を写真機は見ています。
むらいじゅん