浮世絵から写真へー視覚の文明開化ー

自分がみた展示

忘れても思い出せるように,メモ.

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幕末から明治の浮世絵を眺めると、当時の人々が写真に深い関心を寄せていたことがわかります。また写真においても、浮世絵をはじめとする絵から、様々な着想を得ている様子がうかがえます。そして絵や写真は、それぞれの枠を超えて、両者が大胆にからみあった実に面白い作品を生み出していきました。そこには人々のあくなき好奇心や、新しい表現を手に入れたいという気迫が感じられるとともに、江戸時代以来の伝統というものも見え隠れしています。
本展では、浮世絵をはじめとする絵と、幕末期に渡来した写真が、幕末から明治にかけて織りなした多彩な表現を紹介し、日本文化の近代化の一面を明らかにしたいと思います。時代が生んだ不可思議な作品の数々をぜひご覧下さい。

日本の絵と渡来した写真-二つの世界-

ここでは、江戸から明治にかけての絵と写真について、ふたつのコーナーに分けて紹介します。
絵については、江戸時代の浮世絵を中心にご覧いただきます。浮世絵にも写真にも作例の多い名所絵と人物画に着目し、第2章以降の鑑賞のヒントとなるような表現をとる作品を選びました。そして写真については、幕末から明治にかけて活躍した写真師たちの作品や関係資料をご覧いただきます。写真史に名前を残す人々の作品からは、日本における写真術の広まりと技術の発展をたどることができます。
江戸時代に絶大な支持を集めていた浮世絵、そして幕末に輸入された写真というものについて、改めてご確認いただきたいと思います。

第2章 絵と写真の出会い

最初に、写真を受け入れた頃の日本の様子を描いた浮世絵を紹介します。人々の生活の中に、どのように写真は登場してくるのでしょうか。当時の生活風景の中から探していきます。
次に、浮世絵と写真というふたつの「写す」技術や文化が、それぞれの領分に入り込んでいった様子を紹介します。例えば、当時は白と黒で表わされていた写真に絵の具で色を付けたもの、写真そっくりの表現を追求した版画や肉筆画などがあります。それらを眺めていくと、絵とも写真ともつかないような、不思議な表現技術の世界を楽しむことができます。その一方で、先進的であるはずの写真のいくつかに、江戸時代の浮世絵の伝統を引き継いだ発想や表現があることにも気付かされます。第2章では、絵と写真が様々に刺激し合って誕生した、多彩な作品を紹介します。

第3章 泥絵、ガラス絵、写真油絵-時代が生んだ不思議なモノ-

写真の他に、日本人が関心を寄せた西洋の表現技術が油絵です。初めに、油絵に代表される舶来画を意識した江戸から明治の諸作品を紹介します。浮世絵をはじめ、泥絵、ガラス絵などがあります。泥絵は、安価な泥絵具で描かれた、素朴ながらも油絵風な描写を狙った肉筆画で、ガラス絵は、ガラスの裏から、通常塗り重ねるのとは逆の手順で彩色を施したものです。

そしてさらに、この裏から塗る技術を用いつつ、油絵と写真を融合したのが横山松三郎(よこやま まつさぶろう:1838~1884年/天保9~明治17)による写真油絵です。この写真油絵は、印画紙の表面だけを薄く残すように裏の紙を削り取り、裏から油絵具で着彩するという、繊細な技術によって制作されるものです。現存する作品の数も、非常に限られています。第3章後半では、油絵と写真というもうひとつの出会いから誕生した写真油絵と、その制作者たちの諸作品をご覧いただきます。

■エピローグ

江戸時代から現在に至るまで、多くの人々の注目を集めてきた相撲。ここで紹介するのは、江戸時代から明治時代の力士を描いた浮世絵版画、いわゆる相撲錦絵と、平成の横綱白鵬関の優勝額です。

今も本場所で優勝した力士に贈られるこの優勝額は、2013年(平成25)まで、実はモノクロ写真に油絵の具で彩色したものでした。カラー写真とは異なる独特な風合いの姿が、印象に残っている人もいらっしゃることでしょう。力士の姿は江戸時代の相撲錦絵と変わらず、そして描く技術はまさに、明治時代に量産された着色写真の現代版と言えます。
最後に相撲という長い歴史を持つテーマを通じて、浮世絵、写真、そして油絵による表現というものを楽しんでいただければ幸いです。