行動経済学から

 最近、面白いと感じているのは経済学ー行動経済学です。『ヤバい経済学』スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー (著), 望月衛 (翻訳)が話題となって既に数年たったいま、NHKテレビ『オイコノミア』などでも取り扱われるほど、身近になってきている。僕は大学では政治や経済はとても苦手だったので、避けてきている。しかし、行動経済学は人間の心理と行動を経済面から分析して説明してくれているので、元々経済学の知識の無い僕でも、様々な切り口から楽しむことができる。興味を持ち始めて、周りを眺めてみると入門編のものが沢山用意されていた。

 テレビを見ていたら、フリードリヒ・ハイエク「競争は人の持つ特性を見つけ出す最高の装置である」との言葉が出来てきた。これまで、数多くの美術という山道を登っている人達と出会ってきた。現役美大生には数百名と話してきたし、画廊と契約をしている同年代の作家、大学で教えている美大教諭、人間国宝、美術館学芸員などなど。今回フリードリヒ・ハイクの言葉を聞いて、この人達を2つのグループに分けることができることに気がついた。目標がはっきりとしている人達と、いったいこの人達は何処を目ざしているのか分からない人達。僕自身は、セカンドグループのなかで、上見て、周りを見て、何となく活動をしている。

 ピラミッドの図は作家としての経済的道筋を3段階にして書いた。誰でも始めは自分の個展が先ずは第一歩。次ぎのメジャーデビューは幾つかパターンはある。例えば、画廊の企画で展覧会を開催してもらい、学芸員の目にとまって、美術館での展示に出品。公費で海外研修へ。画廊と共にアートフェアーへ出かけて、作品の販売や、現地で人との出会いがあったり。実際のところは、多くは美術教育現場で講師として働き給与で稼ぐ場合が殆どでもある。

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  自分の初個展から大分時間が経つ。僕の周りにも既にメジャーデビューを果たした友人も数名出てきている。自分には、このピラミッドを登る適性があるのか?それを見極められる勇気があるのか。アートの世界が外から分かりにくいと言われている理由の1つには、アートの世界にはピラミッドが複数存在しているからじゃないだろうか。頂点に”稼ぐ”と書いてあるが、そもそも”上がり”を別の目標に設定している美術家も大勢いる。しかし、これまで自分が見聞きしてきた範囲では、何事も明確な目標を持っている人ほど、無駄なことをしないで、ゴールへとたどり着くための道筋を常に探している。

5月の展示『建物に住む展 2016』

  • 日程:2016.5.18(wed)〜22(sun)
  • 時間:10:00〜18:00 (最終日16:00)
  • 会場:❶/川口市立アートギャラリーATLIA
  • 会場:❷/masuiiR.D.R gallery

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ますいい建築圏展ー展示への思いー
ますいいリビングカンパニーは、これからの時代における新しい工務店のあり方を志す設計者集団です。
設立当初より、建築家石山修武先生のご指導を頂き、建築家が住宅設計にかかわるのであれば、工務店機能(生産組織)を兼ね備えるべきであるという考えのもとに、比較的低価格で住宅取得を考えている方々が、もっと自由に家作りを楽しむことができるようにとの思いで、セルフビルドや原価の公開を行いながら、クライアント参加型の家作りを進めています。その一方で職人の高齢化による人材不足の問題や、既存の物流体制の中ではコストコントロールにも限界があり、良いものを安く提供するには更なる改革、独自の物流体制、職人集団を持つ生産方式が必要になると感じています。
もちろんそれは部材を組み立てる工法、これからさらに多様化するであろう生活者のライフスタイルにおける設計者としての立場と無関係ではありません。今回の企画展示は設立から21年を記念して、これまでの活動を振り返るとともに、今後10年の歩みを予見し、従来型の住宅供給の枠組みから抜け出す第一歩となることを目的としています。本展を通して、日本の住宅事情に何らかの良い変化をもたらすことを期待しています。
イラスト/文:増井真也



「公式ウェブサイト」はこちら


来月に川口市グループ展『建物にすむ』に参加をします。
さて、今回、出品作家へギャラリーR.D.Rより質問が投げかけられ、答えるという企画があります。ぼくは後半だったので質問をもらってから1ヶ月ほどの持ち時間がありました。しかし、出品作品が変化すると、テキストも手直ししてしまい、一向渡すことができないままに締め切り日が近づいてきてしまいました。

質問ーますい

「過去の作品やますいいが関わらせていただいた作品で「窓」を撮影された作品が印象に残っております。
作品制作において、建物の一部でもある「窓」にどういった思いをもっているのでしょうか?」


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答えーむらい

僕が建築に興味を持ち始めたのは小学生の頃からです。自分がこれから住む建物が1人の建築家によってデザインされ、大勢の職人によって作り上げらていく場面に出会ったのがきっかけです。その建物の中で自分が大きくなっていく時間流れのなかで、建物に対して自分の思考も変化していくことがとても面白いと思いました。いまでも基礎、柱、屋根、壁などの家の構造よりも、例えば毎日見ているひとつの窓に対する自分の理解が年齢を重ねるごとに変化していくことができる、建物全体への憧れを持っています。窓も様々な大きさ、形、色、素材にそれぞれ特徴があり、備え付けられている位置や方角も千差万別あります。建物のなかでも、僕が窓を好きな理由は、見るということを考えさせてくれるからです。

写真との出会いは、大学の授業でショートムビーを作った経験が卒業後に始めた写真へと繋がっていきます。ショートムビーでは、自分が書いた台本をクラスメイトが演じることによってフィクションがスクリーンの上で展開しました。いまの自分への課題は、具象を具象のままに、撮影をくり返すことからどのように抜け出せばいいのか。そしてもう1つは、私が撮影をした場所に人の気持ちを引き込むのではなく、姿形の無い第3の場所へと思考を拡張させるためにはどうすればいいのかです。窓を眺めながら、硝子越しに見える風景と、硝子面に反射する光、床に映る影、太陽の熱、雲の湿度、窓は毎日違う、表情を持っているので見飽きることがありません。

写真ではよく風景を切り取ったり、自己の内面性を被写体に重ね合わせたりした写真のことを、鏡や窓のようであるという例えを使うことがあります。(歴史的なキューレーターであるジョン・シャーカフスキーによってMoMA開催された「鏡と窓」展(1978年)の影響も大きいと思います。)僕にとって写真とは、己の内的な経験と等価値であるということです。一枚の写真は、具象を観念化し、再具象するプロセスで出来上がっています。自分の解釈、分析、経験などの個人的な能力を越える被写体を写真化すること自体が自分との戦いでもあり、写真を続けているモチベーションにもなっています。

本展のタイトルでもある『建物にすむ』ということで、窓と自分の写真との関係について考え直してみるきっかけになりました。今回見るということ、そこに写真メディアについて自分の経験を重ね合わせた結果、”映像と空間”へと考えが広がっていったことを作品化して展示します。

むらいじゅん

近代芸術の革命——hans sedlmayr die revolution der modernen Kunst

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『近代芸術の革命——hans sedlmayr die revolution der modernen Kunst』著者:ハンス・ゼーデルマイア,訳:石川公一

昨日、撮影の帰り道立ち寄った古本屋で見つけて購入。間口は狭く、細長い形でした。どちらかというと、小型の古本屋さんでした。通りかかったのは夜の9時頃でしたのに、閉店準備が始まる様子はありませんでした。遅い時間でも人通りがあるでしょうか。硝子の引き戸を開けると、1人用のカウンターがあって、小さなスピーカーから音楽が聞こえてきます。右手の低い棚には、子供用の絵本が数冊箱に入っていました。本棚には、美術、芸術、音楽、映画、写真、宗教、哲学、心理学などもありました。また近くを通ったら、寄ってみようと思います。
今年に入って、1900年〜60年代までの美術が自分のなかで面白くなってきています。この本は、拙著『中心の喪失』の後に書かれていて、取り扱っている年代は1905年(明治38年)〜1925年(大正14年)の間の美術。さて本書にどのような事が書かれているのか、いまから読むのが楽しみです。

[目次]

  • 目次
  • はじめに
  • 序論 「近代芸術」とはなにか? / p6
  • 第一の親定 「純粋性」への努力 / p15

  • 1 「純粋」建築
  • 2 「純粋」絵画(いわゆる抽象絵画)
  • 3 絵画の「純粋」成分
  • 4 「純粋」彫塑
  • 5 装飾の死
  • 6 「純粋」諸芸術相互の関係
  • 7 絶対音楽
  • 8 「純粋詩」
  • 9 純粋詩人
  • 10 自律芸術
  • 11 自律的な芸術家
  • 第二の規定 幾何学と技術的な構成にとらわれた諸芸術 / p78

  • 1 純粋幾何学にとらわれた建築
  • 2 技術的構成にとらわれた建築
  • 3 技術的構成にとらわれた彫塑
  • 4 構成にとらわれた絵画
  • 5 幾何学の精神と他の諸芸術における構成の精神
  • 6 構成主義的な「芸術」の二極
  • 第三の規定 自由の逃避としての狂い(シュルレアリスム) / p97

  • 1 シュルレアリスムの絵画
  • 2 シュルレアリスムの彫塑と建築
  • 第四の規定 根源的なものを求めて(表現主義) / p107
  • 第一の展望 「近代芸術」の偶像 / p114

  • 1 近代芸術の最高の「興味」
  • 2 唯美主義
  • 3 科学主義
  • 4 技術主義
  • 5 「故意の狂い」
  • 第二の展望 「近代芸術」の革命 / p136

  • 見通し / p146
  • 結び / p152
  • 「近代芸術」エンサイクロペディア / p155
  • 著者について / p166
  • 訳者あとがき / p168
  • 『寝ながら学べる構造主義——』

    読み始めた本
    『寝ながら学べる構造主義——』著者:内田 樹

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    第50回ベネチア・ビエンナーレ(2003年)

    • 総合ディレクター:フランチェスコ・ボナミ
    • テーマ:「Dreams and Conflicts(夢と衝突)」

    このときの日本館ディレクターは長谷川祐子氏でした。(2004年に金沢21世紀美術館開館)そしてテーマは「Heterotopias(他なる場所)」。長谷川氏のインタビュー記事のなかで、ミッシェル・フーコ(フランス ポワチエ生まれ 1926年ー1984年)の構造主義からの引用についての説明がありました。今回Amazonから日替わりセールのお知らせが届いたので早速電子書籍版を購入。丁度『僕たちの民主主義なんだぜ』著者:高橋源一郎を読み終えるタイミングでした。長谷川氏のインタビュー記事を読むまえに、ジャン=ポール・サルトル(フランス・パリ生まれ1905年ー1980年)の実存主義について調べているうちに、写真との関連性を見つけ出せていました。『寝ながら学べる構造主義』を読んで美術との関係性について学ぶきっかけにしたい。構造主義の旗手として同時期の同じフランス人哲学者についても知っておくことが必要になるのかもしれません。