覆われた風景ーDIFFERENT DIMENSIONS 【会期】2012. 【会場】Gallery R.D.R(埼玉県) 【素材】インクジェットプリント
私に見えているのは境界。
光と色、形と大きさ、光と影、現在と過去。
自分とカメラとの間にも距離があり。
画像が反転し浮かび上がる瞬間。
ディファレントディメンジョン — 覆われた風景 太陽の光が眩しい道を歩いていた。いつもの見慣れた風景、道すがらの途中に見えていたはずのものが僅かな記憶としてしか残っていなかった。後ろを振り返りそのまま目を閉じると、暑さと電車の走り去る音、そして網膜の裏側に見えないはずの何かが光ったり、暗闇の中へ消えていったりする残像としてだけが残っていた。まばゆい光と遮る影が心のどこかに強い印象を残こしたままに、今回の制作を始めることにしました。 私にとって写真とは体験を重ねていくことで繋がっていきます。レンズを通して見えるシャープな現実の上に、自己を投影することで、ものとの境界がぼんやりと映りはじめ、脳裏に浮かんだ光が大きくなって黒い影が覆い被さっていきます。カメラの前にある全てを等価に記録した写真。ありのままの現実と言葉にならない体験の境界を私はなんども往復し、自分の感情の機微が掘り起こされ、有機的な風景へと近づくいていくために作品を作り上げていきます。私は写真を使って虚実の境界を行き来きしたいのです。 ものは太陽の光が反射することでその存在をあらわにしますが、映像は私にとって日常の片隅に浮かんでは消えていく、薄い膜に投影される光と色の様なものです。 写真は、心の光が交差しなかったために印象という抽象に置き換わった存在であり、もっと軽く、薄く、消えていってしまうものなのだと感じながら制作を続けています。 むらいじゅん